部屋の隅の気持ち。 2




8.

 クレーヴ広場で、今後の指示を出し、モーリ少尉の代わりとなる指揮官の到着を待って、
オスカルは第一班とともに兵営に戻った。その間のオスカルは非常に淡々としていた。
いつもにまして、兵士たちの1つ1つの行動にスピードと正確さを求めた。
怒りを通り越しているのか、凍りついたような空気をまとって指示を繰り出す隊長に、皆、緊張して従った。
隊員は、その理由を、働かない将校と爆竹犯を取り逃がした所為だといちおうに納得していた。
そして、そんな隊長にアランがちょっかいを出さない事だけを祈っていた。皆が心配するほどには、
最近はアランの反抗的態度も減ってきてはいるのだが。
無事に解散の声を聞いたとき、皆は胸をなでおろした。



「今日は、あと、警察本部に報告に行って、直帰しよう。
 モーリ少尉の処分はダグー大佐にまかせる.。後日でいいだろう。」
オスカルは、日の傾きかけた司令官室で、報告書にサインしながらつぶやいた。
秋の足の長い夕暮れの日差しが、物悲しげに風に揺らされる木々の葉の影を壁に映している。
いったん間をおいたが、いつもならはいる合いの手が返ってこないので、オスカルは話を続けた。
「王宮警護とパリ市内の治安維持に配置する人員の比率の変更は、明日から検討に入る。
 今日は、早めに帰ってお前とじっくり話がしたい。」

オスカルは、アンドレとの溝を埋めたいと願っていた。今晩はジェローデルの邪魔も入らない。
思い切って、核心に触れた話をしてみようと、決心した。

このところ、2人キリでも絶対に触れなかった話題。自分の結婚話。
アンドレに話してどうなるわけではなかったが、自分に結婚の意志が無い事だけは、伝えたかった。
そして、昼間のコンドルセ候の話。アンドレの気持ちを確かめたかった。

コンドルセ候の話を半ば振り切るように別れてから、とにかく仕事に没頭した。
自分は仕事中心に生きてきた。これはもう生きがいというよりは、自分の全てであった。
仕事を完璧にこなす事は、当たり前であり、
仕事中にほかの事に気をとられるなんて信じられない、いや、許されない事であった。
しかし、今日は、気づくと仕事に集中していない自分がいた。
コンドルセ候の話で、自分の結婚話がかなりリアルに薦められている事を実感したことよりも、
アンドレの引き抜きの話のほうが、気になった。
胃の底のほうが冷えたように感じ。食欲もわかない。
そんな自分を、客観的に観察するもう一人の自分がイライラする。
アンドレがいなくなる。
そのようなことにならないように、阻止せんと考えをめぐらす自分と、
本当にアンドレのことを思うなら、どうしたらよいのか、と頭を痛める自分がいた。
客観的なもう1人の自分は、思考がチリヂリになる自分に鼻を鳴らす。
とにかく、話をしなければ。いつまでもこの状態でいたくない。
できれば、子供の頃にイタズラを2人で企てた時のように、
あの頃のように、協力し合って・・・

「警察にはアランを連れてゆけ」
同じようにペンを走らせていたアンドレが、書類から目も上げずにそっけなく答えた。

「アンドレ!」まだ、わたしを避けるのか?オスカルは睨みつけた。

「おまえ、アランを育てるつもりなんだろう?
 なんのために、勤務のローテーションを一班にあわせているんだ?
 いい機会だ、アランと行けばいい。」

「では、アランも連れて行こう。
 お前もサッサときりをつけて・・・」

「俺はベルナールの所へ行って、あの坊主がどうなったか、聞いてくる。
 気になっているんだろう?
 あとな、お前に頼まれている、パリ市内の建物の高さの調査もまとめ上げていないし、
 いろいろパリへでて調べておきたいことがあるんだ。
 現時点のパリの人口の推定も手間取っている。
 納税者名簿から算出した警察のデータなど、 はなから、アテにはしてなかったがな。
 とにかく、先日公表された数字は、全く信用できんな。
 適当に推計学の数式をあてはめたんだろう。仕事をする気があるとは思えないお粗末さだ。
 足で、もっと丹念に調べないと、サンプルの居住区の人数でパリの全人口を知ることは不可能だ。」
普段から、綿密な計画の下、仕事を進めるアンドレではあったが、
仕事を棒読みするように並べ立てて、譲ろうとしない。

「アンドレ・・・だったら、今日はもう、どちらにしろ仕事はすすまないだろう?
 もう、日が暮れる。実踏しての調査は無理だ。」
取り付く島の無いアンドレに、オスカルは諭すように話しかけてみる。

しかしアンドレの反応は変わらなかった。
「とにかく、俺は、コッチを片付けておく。
 お前は、やるとl決めた事を最後までキチンとすませろ
 ・・・今日の仕事を・・・最後まで・・・」

「お前の仕事は、わたしの補佐だろう?
 それとも、書類上の数字合わせのほうが楽しいか?」
自分は、最大限に感情を抑えて話しかけてきたつもりだった。
でも、我慢にも限界がある。オスカルの語気が上がっていく。
「お前は、お前の本当にやりたいことはなんだ?
 今日の話にあった、コンドルセ先生の仕事の手伝いの方が、興味あるんじゃないのか?
 そうならはっきり言ってくれ!」
話が飛躍している事は、自分でもわかっている。
こんな聞き方をしたいわけではないのに、自分の気持ちがコントロールできない。

「俺のやりたいこと?」
フフ、っと悲しそうな瞳で笑いながら静かにアンドレが答える。
「コンドルセ先生の仕事には興味ないさ。
 社会数学、しかも、政治の道具に使う数学の手伝いなど、たいした魅力じゃない。」
アンドレは、手元の書類をまとめ、トントンと机にうちつけながら、片付け始めた。

「じゃあ、お前は、なにがしたいのだ?
 わたしさえいなければ、なにが・・・」

「お前に心配してもらわずとも、俺は俺の選択肢の中で、
 一番気に入った仕事を選んでいるさ。
 お前との仕事がイヤなら、少し気を抜けば済むことだろう?
 旦那さまが、さっさと首を切ってくださる。それでおしまいだ。」
そういいながら、もうアンドレはドアに向かっていた。

「アンドレっ!!」
オスカルはアンドレの腕をつかみ、ドアに背を向けて、行く手をさえぎった。
「本当に、本当にコンドルセ先生の仕事に興味はないんだな?」

「ああ」

「わたしと、このまま仕事を続けていく事に、不満はないか?」

「・・・お前は、お前はどうなんだ?」
つかまれた腕を振り解き、その手でオスカルの肩をつかんだ。
「本当に結婚するつもりはないのか?・・・あの男と」
アンドレの顔がゆがみ声がかすれる。

「ない!」

「俺とこのまま、ずっと仕事を?」

「ああ!そのつもりだ」

「ふ・・・ふふふふふふふ」
オスカルの肩をつかんでいた手が、力なく下ろされる。

「なにがおかしい?!」

「ずっと一緒でいいんだな?・・・ふふふ」

「アンドレ?」

「どいてくれ、今日の仕事を終わらせてくる。」

「屋敷に今晩は帰ってくるんだろうな?」

「帰るさ、おれのいくところが、他にあると思うのか?」

「帰ったら、わたしの部屋へ」

「ああ・・・」

[バタンっ]
アンドレは、オスカルを押しのけ、出て行った。

「一番欲しいものは、永遠に選択肢にすら出来ないんだよ。
 ・・・オスカル。」
閉められたドアの外で、アンドレは小さくつぶやいた。
その表情は、悲しい口調と裏腹に笑っていた。

[ダンっっ!]
オスカルは、思いっきり机を拳で打ちつけた。
何かが違う。かみあわない。自分の気持ちが伝えきれない。
自分の気持ち?
一体、何をわたしは考えているのだ?

アンドレの言うとおりだ。わたしは、わたしの仕事の為に人にいえない努力をしてきた。
それに付き従ってくれたアンドレ。お前も、お前こそずっと努力を続けてきてくれたのだ。
わたしとやっていくために。
『わたしと、このまま仕事を続けていく事に、不満はないか?』
いまさら・・・くだらない質問。
わたしは、お前のどんな答えが欲しいんだ。



*************************

 オスカルは警察に、本日の事件の経緯を説明し、今後も捜査に協力する旨を伝え、
少々の嫌みの応酬はありはしたが、無難に仕事を終えて屋敷へと向かった。
アランは、面白くなさそうな態度を終始崩さなかったが、アンドレに言われたと、
屋敷までのオスカルの供も勤めた。
太陽は姿を隠し、夜が始まろうとしていた。

「アラン、今日はご苦労だったな。
 これから待機の日は、わたしと行動してもらうことが多くなるから覚悟しておいてくれ。」
自分の前に座り、馬車の窓に肘をかけ、つまらなそうに景色を眺めるアランに
オスカルは少し微笑みながら話しかける。
オスカルは思う。アランはイロイロと問題を起こしてくれる、が、
実はとても真面目で仕事熱心であり、有能である。
例の規則など無く、正当に評価されていれば、将校として活躍してくれるだろう。
今日の騒ぎにだって、アランが指揮を取れれば、自分が出て行かなくとも、よかったかもしれない。
悪則に嫌悪感を感じる。全くもって不条理だ。

なんで俺を連れまわすんだ?そういぶかしがりながらも、アランは軽口をたたく。
「はっ、隊長がこれだから、その腰ぎんちゃくも人使いが荒いんだ。
 さっき、フランソワとピエールとラサール連れて、パリの街に出て行ったぜ?
 超過勤務もはなはだしいっ!」
オスカルから投げかけられる言葉を、とりあえずアランは窓の外に返す。

「ははは。皆良く働くな。勤怠表に花丸をつけておいてやろう。」

「花丸なんか、腹の足しにならねー。
 アンドレのほうがよっぽど気が効いてるぜ。
 あいつらきっと仕事が終わったら、可愛いおねーちゃんの居るパブだ。
 ラサールなんかそれがわかってるから、ホイホイ奴についていくんだ。」

「なんだ、アンドレはそんなことしているのか?
 ・・・よし。じゃあ、アラン、わたしたちも行ってみるか。」

「はぁ?なに言ってやがる、行った事も無いくせに!」
まるで独り言のように、小さく吐き捨てた。

「ある。」

「へ?」

「パリの居酒屋だろ?アンドレと何回か行ったことあるぞ」
オスカルはにやりと笑った。

「アンタが、そんなところへ出入りして・・・
 場違いもはなはだしいだろう。」ようやくオスカルに向いて言葉を発するアラン。

「ああ、ケンカになった。」クスクスとおかしそうにオスカルは笑う。
そんなオスカルを不思議そうにアランは見つめる。

「あはは。ボコボコにやられて、アンドレなんか、財布すられて、
 それから・・・それから・・・」
アンドレに抱かれて、それから・・・
オスカルはまた、あの不思議な感覚に自分がつつまれるのを感じた。

「はん!いつ頃の話だ?今行ったら、殴られるぐらいじゃすまないぜ!
 殺されるの覚悟シナ。そんな、貴族の臭いがプンプンするやつは・・・」

「わたしの臭いは、そんなに違うのか?
 その・・・アンドレとも違うのか???」

「はぁぁあ?」
この女は、一体ナニ考えて生きてるんだ、サッパリワカラン。
アンドレの臭い???ナンで、俺サマがそんなこと考えなくっちゃいけないんだ、
アホらしい。『うえっ、ヤロウの臭いなんて改めて考えたくもネエ。』
アランは、返答できませんとばかりに、肩をすくめた。
 
「隊長、どうして、衛兵隊にやってきたんだ?
 近衛の連隊長の方がお似合いだろうに。」

「お前のような男に会いたかったからだといっただろ?」

「フザケンナっ」

「・・・黒い騎士を取り逃がした。
 ・・・・・・ああっ!・・・今日の爆竹犯も取り逃がしたな。
 今度こそ降格処分かな。はは!
 警察でも、さんざんイヤミをいわれたな!!!」

「ナニいってるんですか、今日は1人は捕まえたのに、サッサと逃がしちまったんでしょ?
 自分で逃がしておいて・・・」
はっ・・・と、アランの表情が変わる。
「隊長、もしかして・・・・・・・・?」

「フン」オスカルはすました顔で一蹴した。

この女、本当に、ナニを考えているんだ。マジで理解できない。
黒い騎士といえば2年ほど前、世間を騒がせた義賊だ。
「騎士」などと洒落た名を名乗っていたのが俺サマの趣味じゃないけどな。
偉く派手に、貴族の館を荒らしていたのに、突然、パッタリと現れなくなった。
もしかして、その盗賊を捕まえておいて、逃がしたのか?
今日、コッソリ放してやった小僧とは、ワケが違うぞ??
どうして?義賊だからか???
「隊長、まともな軍人じゃないですよ、それ」

「軍規は守るさ。破ったらちゃんと処分もうける。
 ただ、わたしは、わたしのやりたい仕事のできる場所で働きたいだけだ。
 ココがだめになったら、また次を探すしかないな。
 わたしの中の矛盾を解いていきたい。
 悲しいかな、どこへいこうが軍人しかできないだろうがな・・・」
 軍人でしかいられないのはお前も同じじゃないのか?オスカルはそう思った。
 アランがジャルジェに生まれていたら、父上はきっと満足されていただろうな・・・。
 自分と比べるつもりはないが、そう思う。わたしがアランの家に生まれていたら、
 ディアンヌ嬢のように結婚するのだろうか・・・。それは想像もつかないことだな。

「ふ〜ん。ナニがやりたいのか、サッパリわかりませんがね。
 いつ処分されるかわからない隊長にわれわれは、ついているんですか?
 ははは、たまりませんね。そんな怪しい上官についていく奴はいませんよ。」

『アンドレがいるさ・・・。』
おもわず、声に出しそうになったフレーズをオスカルは飲み込む。
同時に、アランもアンドレの顔が脳裏に浮かんだ。

「ディアンヌ嬢・・・」

「は?」話が急に変わり、拍子抜けするアラン。

「結婚するそうだな。おめでとう。」

「はぁ」

オスカルは、アランにディアンヌの結婚について、アランの結婚観などを聞いてみようかと思ったが、
何をどう切り出していいのかわからず、言葉が続かなかった。
ディアンヌの幸せ・・・女の幸せ・・・。
『ふふ。アランに聞いても仕方ないな。ガチガチ親父の答えが返ってきそうだ。』
もう、無理に考えるのはヤメダ。オスカルは振り切った。

屋敷に到着し、馬車を迎えたジャルジェ家の使用人が、手にした灯りを持ち上げて
自分を不思議そうに見るのを、アランは感じた。
『ああ、アンドレじゃないからか』
そして、玄関先で、たくさんの書類を抱えて通りかかった
自分と同じくらいの年齢の使用人の顔色が変わったときは、
さすがのオスカルもその雰囲気を察し、心配そうなその男に声をかけた。
「ああ、クロード、アンドレはパリで別行動なんだ。 心配しなくてよい。」
ホっとした表情をしてその男は軽く会釈をし下がっていった。
『やけに奴の事を心配するんだな』事情のわからないアランは思った。
警察から引き上げてきた荷物をもってオスカルの後からホールに入ると、
年季の入った召使の老女が、オスカルに抱きつかんばかりに、いそいそと飛び出してきた。

「お嬢様、お帰りなさいませ!
 まあ、あのバカは、今日はどうしたんでございますか?」

剣と手袋を差し出しながら、隊では見せることのない表情でオスカルが話しかける。
「ばあや、心配しなくていい、アンドレとは別行動なんだ。」

「アンドレの心配なんかしておりませんよ!
 あのコったら、お嬢様のおそばを離れてナニしてるんでしょう!」
そういいながら、アランの風貌をさりげなくではあるがチェックするように観察し始めた。
ボロボロに擦り切れてくたびれた軍服ではあるが、その身長は孫ほどは無いにしても、
十分に高く、体つきも服の上からでも鍛えられているものだということがわかる。
軍人の出入りが多いジャルジェ家。長年仕えてきた彼女は、アランを一目見て、
食べる為に職を求めた志願兵ではなく、軍人になるべく教育を受けているであろうその姿勢を感じ取った。
アランに向けて深めのお辞儀をするばあやを見、オスカルが紹介した。
「ああ、アラン・ド・ソワソン。わたしの部下だ。
 アラン、わたしのばあや。アンドレのおばあちゃんだ。
 ばあや、なにか温かいものでも出してやってくれないか?
 コイツ、アンドレの仕事の方にについていけなくて、
 わたしの供だったから、 ヘソを曲げているようなんだ。
 ばあや、アンドレは、随分気前がよいらしいぞ!
 今夜も、仕事が終わったらパブでオゴッテ帰ってくるらしい。」

「まったく、ナニ考えてるんでしょうね。
 ジェローデル様を迎えての晩餐続きで、ネコの手も借りたいっていうほどなのにっ!」
オスカルの顔色が変わり、それに気づいたばあやも気まずそうな顔になった。
『?』ワケのわからないアランだったが、兵舎に帰ってから、その意味をフランソワの話から察した。
雰囲気を変えるかのように、ばあやはアランにはなしかける。
「ソワソン様、こちらへどうぞ」
オスカルから預かった剣と手袋を、マドレーヌに渡し、アランを奥へとうながした。

「あはは。アラン、ばあやはお前を気に入ったようだぞ。
 ばあやがわたしを置いてお客様を先導するのは珍しいんだ。
 とにかく、少しゆっくりしていけばよい。わたしは着替えてくるから」
 
「隊長、折角ですが、わたくしは引き上げます。」
アランは、ここ数年触れていなかった、上流貴族の空気に触発されたのか、
いつもとは異なる物腰で、挨拶して帰っていった。
身分は貴族。士官学校をでて少尉だったアラン。
そんなアランを見て、オスカルは、『貴族の臭い』の意味を改めて感じるのであった。



*********************************

 その晩、あっけなく溝が埋まった。

ワイングラスの割れる音とともに、何かがはじけて、
アンドレの涙がわたしの頬をうった瞬間に、溝が消えた。
わたしは、ナンにも変わらず、何もしなかったのに。

久しぶりに、わたしの部屋に、ワインを運んできたお前。
アンドレの部屋から拝借してきたあの本を読んで、涙が出たわたし。
それを見て驚いたお前。ただそれだけだ。

結局何も話せず、うやむやのうちにあの日は終わってしまった。
あの口にすることができなかったワインの意味も深く考えようとは思わなかった。
でも、わたしはうぬぼれても良いんだろう?
お前は、あの告白の時の言葉どおり、今もわたしを愛してくれている。
他の男の手に渡すくらいなら、父上に射殺された方がましだといったお前。
わたしは、わたしは・・・・・・
ワカラナイ。
お前に女として求められると、どうしてよいか、わからなくなる。
わたしには、皆の言う、女の幸せが理解できなかった。
お前にもそれをあたえてやることはできないだろう。
でも、お前とずっとやっていきたい。
他の男のものにならなければ、許してくれるか?
お前の愛に甘えてもよいか???

それなら、わたしは、今までどおり、軍人として、いや、今まで以上に、この身を剣にささげ、砲弾にささげ、
生涯を武官としてやっていくと、このまま生きていきたいと、お前との一生を誓えるぞ。

お前は、それでいいか?
『ナニをいまさら!』客観的なわたしが出てきて、また鼻を鳴らした。

次の日からのアンドレは、以前にもまして完璧にわたしをサポートするようになった。
ただ、お前から熱を感じられなくなった。
お前の想いの熱。前は、熱かったり冷たかったりすることがあったのに。
今のお前は、おだやかなんだ。
わたしに、なにも求めていないようだ。
とても、心地よく包まれている安心感を感じる反面、物足りなくも感じる。
この関係を望んでいたのはわたしなのに。
常に一定の温度でわたしをくるみ続けるお前。
不思議なくらいおとなしく、ひかえめで、はじけなく。お前は少し変わった。



そんなお前に、熱を上げたり下げたりするわたしをわたしが自覚するのは、
数日後に起こるあの事件がきっかけ。

そして、その想いにラベルをシッカリ貼れるようになるのはもう少し後。

求められる幸せを知り、自分を与えるという本当の意味を実感するのは遠くない未来。

それまで、ずっとわからなかったこの気持ちは、そっとココに置かれた。



この部屋であふれ出すまで。






おわり。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もうええ。なんでもええ。終わりや。終わり~~~~~。
知らん・知らん。


      
京都府南部のたんぽぽ           torishさまの部屋隅<アンドレバージョン>



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