最愛なるもの


クリスマスとその次の日



25日、目を覚ますと枕元に小さなプレゼントが置いてあった。
イブの夜のうちに、プレゼント交換は終わっていたのに。
フランソワたちも、今日は家族だけでお祝いするから。

「!!」

アランだ。

飛び起きて隣のとうさまのベットを覗く。
昨日の夜、ズ〜〜〜ッと待っていたアランが寝ていた。
プレゼントの包みを持ったまま、のそのそとアランの横にもぐりこむ。

あったか〜い。

うつ伏せになって、ワクワクしながら、ガサガサと包み紙を開ける。

青いリボン。

「わぁ・・・ありがとう!」

声に出して言っても、アランは夢の中。
ぜんぜん起きる気配がない。

[トン・トン・トン]
ノックの音がした。

すると頭をかきながら伸びをするアラン。
「あ・・・(わたしがナニしたって起きないくせに。)」

「おはよう」
とうさまが、挨拶をしながら入ってきて、
アランの横にいるわたしを見、顔をしかめる。
「アリス!また!!」

わたしはあわててシーツにもぐりこむ。

「アンドレ、まだいたのか?」
あくびをかみ殺しながらアランが聞いた。

「ああ。午前中、一緒に教会へ行ってから、発つよ。」

「ふ〜ん。どっちでもいいがな。そんなんじゃ、いつ向うに着くかわからんぞ」

「わたし、アランと教会行くから、とうさま早くいったほうがいいよ?」

布団から顔を出し、わたしがそういうと、
複雑な顔をしてとうさまは笑った。

「本当はお前も連れて行ってやりたいんだが・・・」

「ったく、まだそんな女々しいコトいってるのか?
 こんな雪の中、何日かかるかわからないのに、
 チビすけ連れて行って肺炎でも起こしたらどうするんだ。
 さっさと、お前だけ行ってこいっ!
 おお・・・寒っ・・・」

「アラン、ドコいくの?」
起き上がってベットを離れるアランにあわてて聞いた。

「ションベンっ!」
そういうと、とうさまの肩をポンとたたいて、部屋を出て行った。

換わりに、とうさまがベッドにやってきて、腰かけた。

「見て!綺麗なリボンでしょ?」

「ああ。良かったな」
そういうと、とうさまはリボンをわたしの手から受け取り、
頭に結んでくれた。

「どう?カワイイ??」

「ああ。とてもよく似合ってる」

「エヘヘ」

「アリス、お前1人で大丈夫か?」

「1人じゃないモン。今日と明日はアランがいてくれるんでしょ?
 その後は、フランソワんちにお泊り・・・だよね?」
 とうさま、そんなに心配しないでいいよ。
 ぁぁ・・・わたしもオシッコ行ってくるっ」

とうさまは、かけだすわたしの手をつかみ、
上掛けをフワリと肩にかけてくれた。

「もれる・もれる〜」

「さあ、行っておいで」

ドアを飛び出すと、アランと入れ違いになった。


**********

「サッサと行って来いよ、バカ親父」

「う・る・さ・い!」

「チビすけの、『遊びあいて兼、護衛』を
 元上官に命じられているから、 心配スンナ。
 これでも、軍人の端くれ。 ちゃんと任務は果たすさ。
 ま、誰かサンのように、終身雇用制はまっぴらだけどな。
 日雇い労働ってコトで。
 パートタイマーだな。」

「あ・・・あったりまえだ!
 終身雇用だなんてとんでもない!!」

「あはははははははは。
 ば〜か親父っ!コッチがワリにあわねーよっ!」


***********************

なんだかんだで、結局、アンドレが出発したのは、26日の朝だった。
チビすけと見送った時、何度も、何度も振り返って手を振っていたアンドレ。

その姿をみながら、チビすけがコソっとつぶやいた。
「お誕生日、完全に過ぎちゃったね」

「ま、昨日出発してても、間に合わなかったさ。
 新年のお祝いは、向うでできるしな。」

「そだね」

「 ・・・大切なものが2つあると、大変だな」
なにげなく口をついてでた言葉・・・。

「え?どうして???
 大切なものはいっぱいなほうが、イイにきまってるヮ」
チビすけはキョンとして言った。

「あ・・・ははは。 そりゃそうだ。」
大切なモノがナニもない、俺のひがみか。
思わず苦笑いしてしまう。

とりあえず、今日は、お前が俺の大切なモノだな。
パートタイマーだけどな。

「アラン、抱っこ〜」

「お前ね、もうそんな年でもないだろ?
 抱っこは3歳まで!」

「抱っこ〜抱っこ〜〜〜」

・・・軍務の方がラクだな・・・この任務ほんとワリにあわねぇ。
今度、元上官に会うときは、契約更新すべきかどうか、
よ〜く考えないとな。

抱き上げたとたんに、青いリボンがフワフワ揺れてキスの雨が降ってきた。

『この小さきものの笑顔が曇らぬように。』
イブの夜、寝顔見たときは、心からそう思ったが・・・。
結構、キツイ任務だな(笑)。



                               1795年



Fin

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ぐわんばって3部作にしたぞえ〜〜〜(^^;。
                    いっぱい・いっぱいのる・ルン(しかもクリスマスに間に合わず)。


追伸:アランの大切なモノの中に、カトリーヌさんは入ってると思う?
    なんか、やだな・・・カトリーヌさんは家族じゃないよね?(byちび)



2002.12.26


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